世界観系

クウェードリン<Quedling>

概要

アドロードより西方に位置する古都で、ある帝国の首都でもある。
もともとは軍事要塞だったため、非常に堅牢な城が中心に建つ。ほぼ放射状に地区がわかれており、 城、及び重臣の邸宅を囲む第一区から、国教でもある軍神を祀る神殿を囲む第二区、 商業地区でもある第三区とがある。それぞれの地区の周辺には 外壁が築かれ、外敵からの侵入を防ぐ。
なお、食料生産性の低い街でもあり、街の外に存在する町村に 食料を依存している。 そのため、第一区と第二区には巨大な食糧備蓄庫が置かれ、皇帝の許可なしに 備蓄庫を開けることは許されない。 手工業に関しては、第三区で僅かながらも行われている。
商業地区のもっとも外周側には、スラム街が存在する。 ここに集まるのは戦乱で親を亡くし孤児院からあぶれた子供や、 せせこましい犯罪者たちなどの貧しい者たちである。 彼らの中には身分を保証されていない者が多く 徴兵されることはない。しかし、当たり前だが国家に保護されることもない。
戦争時には全国民が徴兵されることが、国民へ向けて宣言されている。

詳細

第一区は高級街であり、重臣たちが住む。この地区は上下水道が完備されており、 非常に美しい街並みを保っている。この地区への街門をくぐるには入城できるだけの地位が 必要とされる。
第二区は神殿が中心にあり、軍神が祀られている。また、侵略戦争の時には拠点ともなる地区である。 入城を許されない多くの下級騎士や、神官たちがこの地区に住む。また、神殿から嘱託された 業者がこの地区の清掃を受け持っているため、地区全域に敷き詰められた石畳は美しく保たれている。
第三区は最も賑わっており、同時にクウェードリンの暗部ともなっている地区である。 定住する商人の店が並ぶ通りや行商人が10日ごとに市を立てる広場 は、石畳が敷かれ、商人たちの手で綺麗にされている。しかし、 一般国民が住む居住区はむき出しの土を踏み固めたものにすぎず、水はけが非常に悪い。 下水道は完備されていないので、常に汚水でぬかるんでいる通りすらある。 スラムにいたっては、ゴミが道の隅に投げ出されて放し飼いの豚がゴミを漁っている始末である。 時折ゴミの山から人間の死体が発見されることも。

この国の国民はみな、利き手の甲に身分証明となる刺青を入れている。そのため、みな手袋をするのが通例。 旅人などで一時的に滞在するものは、滞在日数を限定した身分証明書を持つ。この身分証明書を失うことは、 この国に置いて「人間扱いされない」ことを意味する。
身分証明ともなるものは「聖名」と呼ばれ、国民は生まれたときに与えられる。 10柱の神(アドロードで多く祭られている神とは異なる)と12人の聖人の名を組み合わせ、 「『(10柱の神の1柱)と(12人の聖人の1人)のXXXX番目の子』にして」 「『父親の職業』『父親の名』『何番目の子供か』」「俗名」 として登録される。
多くの孤児や庶子は「父なし」と見られるので、中間部分を持たない。 仮に聖名を持っていなくとも、完全な聖名を持つ者から国勢局に要請してもらえば(そしてその慈善事業は主に教会が行っている) 前半、及び後半部分のみ取得する事が可能。 聖名を持つものは国家に庇護されるが、当然、納税・兵役の義務も発生する。
聖名は多くて7つのパートにしかならないため、言語と図案によって管理される。 当然ながら、まったく同じ聖名は存在しない。 前半及び後半部分のみの聖名の場合、同じ聖名があるという理由で申請した聖名が拒否され、改名を余儀なくされる場合もある。
また、聖名をまったく持たないものは「聖名なし」と呼ばれ、「人間」とすら見なされず、たとえ無意味に殺したとしても罪にもならない。 家畜とすらされず、扱いとしては害畜同然だが、逆に完全な自由を手に入れている存在でもある。 その中には反乱分子などもおり、時折「害畜狩り」がスラムに行われる。時折、その「聖名なし」の中から実力のあるものを 取り立てることもあるが、多くは追放処理、ないしは処刑によって済まされる。
「聖名なし」の増加はこの街において大きな問題であり、 狩り集めた聖名なしへ聖名を取得するよう強制しているが、一度自由の味を覚えた彼らは 往々にして、聖名を刻んだ刺青を消す行為に走る。

アー・リャカ氏族<air leaca>

<アーリの森>に暮らすエルフの氏族。800年以上前、ピクシーの氏族<アー・リヤン>とともに<アーリの森>に住み着いたという。
農耕を行わず、完全に狩猟と採集で生計を立てている小さな氏族。森の奥深くに住み、<アー・リヤン>以外との交流を持たず、 他種族、異なる氏族と接触することもほとんどない。特に、かつて住んでいた森を人間の手によって焼き払われた過去を持つため、人間はまったく信じていない。

生活の中心に森があり、子供は森の恵み、死者は森の木々となるという信仰を持つ。 その一端として、成人の儀とされるものは精霊を宿した植物を体内へ取り込む儀式であり、 死後は植物が遺体を養分として成長するため、遺体は森の中へと放置する。

シュターフェン<Staafen>

概要

長い歴史を持つ小王国。 シュターフェン王国の首都、シュターフェン(都市名も同じ)は元々ある王国の要塞に過ぎなかったが、 異民族との戦いにより要塞が陥落し、シュターフェン王国を建国。 後、この周辺に定住した異民族は徐々に王国から領地を奪い、現在の形となった。 なお、元々の王国は現在消滅している。

国土のほとんどが山岳地帯となっており、首都であるシュターフェンも山地にある。 かつては酪農が主な産業であったが、現在は国家内の交通網を整備し、 徹底的な山賊狩り、それに伴う盗賊行為に対する厳罰や、 山岳地帯には警備軍を配置して商人などの行き来を安全に保ったことにより、交易商人の多くは出来うる限り 安全なシュターフェンを通過するルートを選択するようになり、交易国家としても発展している。
アドロードより西に位置し、王国東部、アドロード側には特に広大な山林が広がっている。

詳細

しかし、ここ数年シュターフェン王国自体の軍備縮小が続いている。 理由としては定かではないが、宮廷に仕えている魔術集団が軍よりも力をつけており、 そのあおりを食ったのではないかというのが王国内での(信憑性は高くない)噂。
軍事縮小が始まってから山賊被害が発生した、というまことしやかな噂もあるが、 職を追われた軍員が流した戯言として王国側は完全に否定している。

    馬首通り<Horse Head st>

    赤い真珠亭しんじゅてい

    馬首通りの、猫小路と呼ばれる小路の目の前に建つ、一軒の酒場。 冒険者がたむろする事はほとんどなく、一般市民の憩いの場所。正規の店員以外も多く店を手伝うことが多く、猫小路周辺住人の会合場所という側面も持つ。 屋号の由来は南からの交易商人がかつて多く宿泊し、その縁で店の名物料理となったトマト。看板もそのままトマトである。
    マスターはベンジャミン、通称「真珠亭のベン」。59歳、未だ独身。酒に関する含蓄が深く、店では酒を供するかグラスを磨いていることが多い。無口というよりもただの口下手で、仕事中は余り口を開かない。近所でも評判のお人好し。
    ベンの代わりに店の料理を引き受けているのは、ウェイターも兼ねるロップ。50歳代に見えるエルフの男である。エルフにしては豪胆な性格。もともと交易商人の護衛として雇われてアドロードへとやってくる旅の途中、事故で足を悪くし、そのまま店に居ついてしまった。
    看板娘は「まな板ライナ」、20歳。両親が多額の借金を残して失踪し、危うく娼婦宿に売り飛ばされそうになった所を、ベンが借金の一部を立て替え、難を逃れた少女。常連の一説にはあまりの胸の小ささに見送られた、とも。ただしその話を持ち出すと、相手が客だろうとまな板で殴りかかるため、あだ名がどちらに由来するのかは定かではない。

    馬首うまくびどお

    かつて交易商人が使用する宿が多く立ち並んでいたことから、その名のついた通り。 街壁に程近い通りで、治安のレベルは下の上といったところ。幅30フィートほどで、治安レベルの低い地域にしてはかなり大きな通りである。
    現在は交易商人たちが出入りすることもあまりなく、利用するのは付近の住人が専ら。一応舗装はされているが、丁寧な仕事ではなく、ところどころ土が露出している場所もある。

    ねこ小路こうじ

    アドロードの街のはずれ――といえば聞こえはいいが、街壁へと繋がる小さな路地。街の記録に登録された正式名称ではない。「馬首通」から、街壁に沿った道へと通じる。
    アドロードの旧市街とも言える位置の隅に、ポツリとある木造建築群。ところどころ道幅が極端に狭くなっており、「猫しか通れない」という揶揄を込めて、猫小路と呼ばれている。
    それほど裕福な人々は住んでおらず、全体的に雑然とした小道である。
    小路の長さは500フィート(150m)ほど。街の中心側の入り口は幅13フィート(約4m)ほどだが、街の外壁を目前にする出口側は3フィート(1m)ほどしかない。
    ちなみに舗装はされておらず、雨が降るとぬかるむ。

    アイテム関係

    雑貨店で売っている/売っていた妙なものをご紹介。 ただし、これらのアイテムは一応マジックアイテム等に含まれますので、 所有しても通常の効果以上の効果を発揮しません。 (机なら机として使えるますが、ルール上の効果は一切ありません)
    掲載の主な目的としては、何かのアイディアソースとしてお使いいただけたらなあ、という感じのものです。 後は……話の種に使ってくださったりしてくだされば僥倖。

    バズビーの椅子 - the Busby Stoop Chair

    座るもの皆、呪い殺す椅子。
    その死に様はさまざま(事故、病気、原因不明等など)ですが、座ると短時間で死んでしまいます。 なんでも、この椅子を愛用した死刑囚が呪っているのだとか……。

    最後の犠牲者の妻から引き取って以来、誰も座れないように天井からぶら下げています。 購入される場合は「人を呪い殺さない」証書を書いていただくことになります。くれぐれも悪用なされませんよう!

    comment

    別名、死を招く椅子。18世紀初頭、イギリスで処刑された殺人犯、トーマス・バズビーの愛用した椅子です。 バズビーの処刑後、彼の名をとったパブ「バズビー・ストゥープ・イン」に置かれていましたが、 その椅子に座ったものは必ず死んでしまうという噂が立ちました。 肝試し代わりに座った人々は後を立ちませんでしたが、彼らは極めて短時間(数時間~数日以内)に死を迎えました。 その人数は、300年で60人を越えます。
    気味が悪くなった主人はサースク博物館にこの椅子を寄付。 現在は誰も座れないよう、天井から鎖でぶら下げられています。
    参考URL(サースク博物館の紹介ページ。画像もあります)
    http://www.thirskmuseum.org/chair.htm
    画像にカーソルを載せると「ここに座ると呪いがかかる!」とでてきます(笑)

    血文字の羊皮紙 - Bloody Parchments

    羊皮紙にされた家畜の恨みか、誰かの呪いか。どんなインクで書いても、文字が血文字になってしまう不思議な羊皮紙。十枚一組でお売りします。
    ちなみに血文字になる以外は普通にご利用いただけます。

    comment

    元ネタは特にありません。思い付きだけの代物ですので、大したものではないかと。
    悪魔(この世界として悪魔はアリなんでしょうか)との契約にでも使ってみたりはいかがでしょうか。

    真夜中のテーブル - the Table of Cleves

    一見古びた大理石のテーブル。ただし、何かやましいことがあるならば、このテーブルの上に物を置いてはいけません。 なぜならこのテーブル、悪事を働いた人の荷物など乗せたくない品行方正なテーブルなのです。 少しの悪事も見逃さず、乗せたが最後、何でもかんでも振り落とします。壊れ物にはご注意を。
    なお、犯人当てにも使えません。十年前、二十年前、お母さんについたささいな嘘すら、 このテーブルにとっては「悪事」なのです。
    おかげで埃も積もらず常にピカピカ、インテリアにはいいかもしれません。

    comment

    またまたイギリスのネタです。元ネタは「アン・オブ・クリーブスの家」という屋敷にある大理石のテーブル。 この屋敷には、トマス・ア・ベケットを暗殺した四人の騎士が暗殺の夜、泊まったと言う伝説があります。
    ベケットと言えば、死後彼の体から流れ出た血は数々の奇跡を起こしたと伝えられる大聖人ですが、 生前は僧侶というよりも軍人、法衣よりも鎧兜が似合うと言われた猛々しい人物でした。 彼は教会の権利を拡大すべく、かつて寵愛してくれた国王と真っ向きって大喧嘩し、 国王を嘆かせた人物でもあります。国王との約束を二枚舌でかわし、 国王との約束を守らなかったばかりか、国王側の僧侶を罷免しました。このことを知った国王は 「余の部下は腑抜けばかり! あの僧が余を笑いものにするのを傍観している」と大声を出して悲嘆にくれました。
    この国王の嘆きを聞いた騎士四人は、ベケットのいたカンタベリー大聖堂へ押しかけて、 罷免の撤回を求めるもベケットは応じず、結果、大聖堂での殺害に至ったのでした。
    さて、その後「アン・オブ・クリーブスの家」に宿を求めた四人は、そこに置かれていた 大理石のテーブルに剣や鎧を置きました。ところが、騎士の悪事、すなわち僧侶の殺害という 神に背く罪を知っていたテーブルは、突然宙を舞って荷物を振り落としてしまったのです。
    それ以来、ベケットが殺害された12月29日になると、このテーブルの上に置かれたものは何故か 振り落とされている……という伝説ができました。
    今でもこのテーブルを一目見ようと、観光客が押し寄せるのだとか。

    参考文献
    石原考哉『幽霊(ゴースト)のいる英国史』(集英社、2003)

    血の火皿 - chafer of coals

    フォースタス家に伝わる小皿で、申し訳ありませんが非売品です。皿の上には血の跡、下には火であぶった跡が残っています。
    これはフォースタス家に生まれた偉大なる魔術師、ジョン・フォースタスが魔王と契約した際、 魂の譲渡証書を書くために使った皿だと言われているのです。残念ながら博士は魔王に魂を売り渡し、 その体は八つ裂きにされてしまいましたが、彼以来、フォースタス家は魔術の徒となりました。これは、その 記念碑的皿なのです。
    しかし、魔王と契約するなどもってのほか。証書は博士自身の血で書かれましたが、 博士の血はなんとか契約を止めさせようと何度も固まりました。そのため、 証書を取りに来た魔王のしもべは火でもってその血を溶かしたと言います。皿の上についた血は博士の血、 皿の下を焦がした炎は悪魔の炎なのです。

    comment

    元ネタは「The Tragical History of Doctor Faustus」。ドイツのファウスト伝説を元に クリストファー・マーロウが書いた戯曲です。
    フォースタス博士(ファウストは英語だとフォースタスになるようです)がルシファーとの契約をする際、 血で譲渡契約書を書きました。血は契約を厭い固まりますが、メフィストフィリスの持って来た火によって 溶かされ、結果フォースタス博士はルシファーと契約してしまいます。 そして24年間の栄華を満喫した後、懺悔もあがきもむなしく、 フォースタス博士はルシファーに魂を持っていかれてしまうのです。
    なお、血が固まるシーンがゲーテの「ファウスト」にあったかどうかは、現在確認中です(どこ行ったー岩波文庫ー)。
    ちなみにPCの「フォースタス」はここからそのままもらいました。

    参考文献:
    Christopher Marlowe(原著)、小田島 雄志(翻訳) 『エリザベス朝演劇集I マルタ島のユダヤ人/フォースタス博士』(白水社、1995)
    ※a chafer of coalsを「火皿」と訳してあり、そこから皿という形でアイテムにしました。
    直訳は「石炭のコガネムシ」、拙訳では火種(?)かと思います。英語は苦手です。得意な言語は何一つありません。

    英文はこちらで読めます。
    The Tragical History of Doctor Faustus
    血が固まる周辺のシーンはFAUSTUS GIVES TO THEE HIS SOULで検索すると簡単に見つかります(証書に書く一文です)

    暴れん坊のサタンクロース - Satanicloth the Tearaway

    まわりに白いファーの縁取りがついた赤いショールです。
    昔、西方の果ての街に「赤い悪魔」と名乗る盗賊団がいました。 どんなに戸締りしても彼らは家に侵入し、トレードマークの夜目にも赤いショールをたなびかせ、 町中の家を荒らしまわりました。 その上、彼らは眠る子供の枕元に忍び込み、子供たちを攫っていくのです。 攫われた子供たちは、奴隷としてあちこちの家に買われていきました。 赤い盗賊団が街を荒らしていた頃、赤いショールは恐怖の対象となり、「悪魔の布」とまで言われました。
    しかし、そんな彼らにも年貢の納め時が来ました。ついに首領が捕らえられ、アジトも割れた盗賊団は一網打尽となりました。 街に平和が訪れたのです。街の人々は「悪魔の布」を集め、火をつけて燃やしました。 燃え残った「悪魔の布」はひらひら、ひらひらと風に煽られ、どこかに飛んでいきました。
    そしてその数年後。
    ある物乞いが、寒さを凌ごうと道に落ちていた赤いショールを肩に巻きつけました。 白いファーはとても暖かく、赤い色は物乞いの心を高揚させました。 ――そしてその晩、一つの家に泥棒が入り、一人の子供がいなくなりました。
    間もなく捕らえられた物乞いは「赤い悪魔が、ファーの中から囁いた」と弁解しました。 しかし、彼が拾ったファーつきのショールはどこにもなく、結局彼は絞首刑にされました。 その後、毎年、寒い冬の最中に子供が一人いなくなり、 捕まった犯人は必ず「ファーの中から悪魔が囁いた」と主張する、そんな事件が繰り返し起きたそうです。

    この赤いショールは、件の事件を引き起こした真犯人「赤い悪魔」がとり憑いているそうです。 今はけして羽織れないようになっていますが――さて、今度の冬に子供がいなくなったら、それはきっと、赤い悪魔の仕業でしょう。

    comment

    ……元ネタは小学生の頃に歌っていた替え歌です。原曲は言わずもがなの「あわてんぼうのサンタクロース」。
    「暴れん坊のサタンクロース クリスマス前に殺ってきた
    ナイフでザクザクザク ナイフでザクザクザク
    奪っていったよ 金を」
    子供はナチュラルに残酷です。

    先日、親戚の子供が「田舎のじっちゃんばっちゃん芋食って屁ェこいてパンツが破れてご臨終」と 替え歌を歌っていて、この替え歌を思い出し 何かネタに出来ないかな……と考えた末、アイテムにしてみました。子供をさらうというモチーフは ドイツ等に見られる「鞭打ちおじさん」(サンタクロースと一緒に訪れる男。「悪い子」はプレゼントの代わりに彼から鞭を食らわされる。 時としてサンタクロース同様大きな袋を持っており、「悪い子」をそこにつめこんで、連れていってしまう。 サンタクロース人形などには今も袋と木の枝を持っているものがあり、この木の枝は鞭うちおじさんの名残とも言われる) からもらいました。
    ……どこにネタが転がっているか判らない、という事でコメントを〆させていただきます。

    赤水のナイフ - Assassin's knife

    ある暴虐極まりない国王の治世下、人々は日々の暮らしにも喘いでいました。 そんな中、国のための正義と信じて、ある男が国王の暗殺に走ったのです。 その時に使われたナイフが、このナイフです。
    森で狩に興じていた国王を殺した後、男は手とナイフについた王の血を洗い流そうと、 大きな池に手を浸しました。すると見る間に池の水は赤く染まってしまったのです。 驚いて手を引き上げた男の目に映ったのは、血ではない何かで赤く染まった自らの手でした。 どれだけ洗っても赤い色は落ちることなく、水は赤く染まるだけで 彼の罪を洗い流してはくれませんでした。
    その後に即位した賢王によって国は救われましたが――前国王を殺した男は、 赤く染まった手のまま、どこかへと去ったと言います。
    それ以来、このナイフを手にした殺害者の手は文字通り、赤く染まってしまうのだそうです。 その手を洗おうとも、水は赤く染まるだけで、罪を洗い流してなどはくれません。
    殺害者を決して許さないナイフは、その罪を目に見える形でさらけ出させるのです。

    comment

    オチが弱い……(主目的変わってる)。
    元ネタはノルマン朝二代目国王、ウィリアム2世の死です。 武力を重んずる彼は軍事的には非凡な才能を発揮し、また、政治的にも決して無能ではなかったのですが、 教育や道徳、信仰といったものをまったくないがしろにして、 「この世で一番嫌いなのは神父」と公言するほどでした。 その結果、キリスト教が歴史を記録する人々に大きな影響を与えていた当時、彼は悪辣無比な王として名を馳せたのです。
    しかし、ウィリアム2世は狩りの最中、部下のウォルター・ティレルが誤射した矢があたり、あっけなく死んでしまいました。 妻子のいなかったウィリアム2世の後を継いだのは、弟であり後に「硯学王」とまで呼ばれる名君とされた、 ヘンリー1世でした。 ヘンリー1世の治世になってしばらくした頃、ある噂が流れたのです。
    ウィリアム2世の死は事故ではなく、暗殺だったというのです。 「ウォルター・ティレルは事件の後、王の血を洗い流すために池で手を洗った。すると池は真っ赤に染まってしまった」 という伝説までまことしやかに囁かれました。もし本当に誤射だったとするならば、手に血がつくわけはありません。 歴史の本はウィリアム2世の死を、「事故死」として記録しています。 しかし、伝説を囁く側――民衆たちは、みな「ウィリアム2世は暗殺された」と信じていたのです。

    参考文献:
    石原考哉『幽霊(ゴースト)のいる英国史』(集英社、2003)

    消えずの蝋燭 - the Life Candle

    黒く煤けて汚い蝋燭です。到底火がつくようには思えません。――そう思っていた方が無難でしょう。
    この蝋燭は「一度火をつけたら、一生消えない蝋燭」を作ろうとしたある魔術師の技術の結晶です。 数刻しかもたないような長さの蝋燭ですが、どれだけ時間がたっても消えません。 この蝋燭さえあれば、一生明かりに悩む事はなくなるのです。この蝋燭はまさに、あなたの命のともし火となるのです。
    ただし、どうかお気をつけを。 その火が消えたが最後、着火した人の命もかき消えてしまうのですから。 もっとも、死んでしまえば、明かりに困るようなことはないでしょうが……

    comment

    元ネタは落語の「死神」。さらに元ネタを辿るとグリム童話の「名付け親の死神」に行き着くそうですが、 どちらにせよ「蝋燭の火=本人の命」というのは同じです。
    酒場でのチャットで「一生消えない蝋燭」という言葉を思いつき、 蝋燭の火=本人の命、という上記の連想から そのままアイテムにしてみました。アイテムを考える時は結構うにうに悩むのですが、 こういう一瞬で思いついた言葉とかの方がマシな出来のような気がして悔しいです。
    あと、フォースタス雑貨店では現在取り扱ってませんのであしからず、廃棄してもらいました(笑)。 何かのネタに使えるかもしれませんので、ここには展示しておきます。

    元ネタ文献:
    昔読みあさった落語集のどれか……(汗

    首のないガラテア - Headless Galatea

    昔、ガラテアという、人形のように美しい女性がいました。 ガラテアの夫は理想の女性でもあるガラテアを心から愛していたのですが、 神が「ガラテアを差し出すように」と命令してきたのです。 彼は苦悩の後、ガラテアとともに命を絶ちました。 彼の死体の隣には、首のないガラテアの彫像が横たわっていたそうです。
    というのも、もともとガラテアは彼の理想の女性を彫り出した像が、人間になっていたのです。 彼の死とともに彼女は彫像へと戻り、神をも魅了したその首は、神の手によって持ち去られてしまいました。

    さて、この首のない女性の像は、そのガラテアの遺体なのだそうです。真偽の程は定かではありません。 美しいガラテアは芸術家の手によって度々絵画や彫像にされましたが、 そのどれもが彼女の美しい顔を描こうとしています。 あえて首のない姿を模した像に、そんないわれが囁かれたのは無理ないことではありますが…… 真実はまさに神のみぞ知る、というところでしょうか。

    comment

    元ネタは「ピグマリオン」。 バーナード・ショーの「ピグマリオン」(「マイ・フェア・レディ」の原作です)は、この伝説がベースにあります。
    ピグマリオンという彫刻家が(キプロスの王とも)自らの理想の女性を像として描き、 その像に恋をしてしまう。それを知ったヴィーナス(アフロディテとも)が、 像に魂とガラテアという名前を与え、人間にした――という伝説。 その物語は多くの絵画や戯曲に描かれていますので、一度はごらんになったこともあるかと思います。 ピグマリオン・コンプレックス、という言葉もありますしね。
    ほとんどそのままですので、特にコメントするようなことはないのですが…… ピグマリオンが、ガラテアを1/16スケールとかで作ってたらどうなるのかしらとか考えてみたり。

    クローウェルのしゃれこうべ - Skull of Crowell

    遠い西方の島国、ブリテイン王国の犯罪者、オリバー・クローウェルの頭蓋骨。 夜な夜な胴体を求めてさ迷う幽霊付きですが、さ迷うだけですので害はありません。
    なお、現地のクローウェルの墓場には首を求めてさ迷うクローウェルの幽霊が出るといいます。 ブリテインに行かれる際にお持ちいただければ、彼を天国に送ることができるかもしれません。 できないかもしれませんが。

    comment

    元はクローウェルではなくクロムウェル。17世紀イギリスの政治家兼軍人です。 上記で「犯罪者」と書きましたが、彼は死ぬまで犯罪者ではありませんでした。
    クロムウェルは国王対議会の内乱を、議会側勝利へと導いた人物です。彼は イギリスを共和制にし、国王を処刑して死ぬまで議会のトップに君臨し続けました。 しかし、彼の死後間もなく王政が復活した時、 彼の死体は反逆者として墓から掘り返され、絞首刑に処せられたのです。
    絞首刑にされた数年後、ウェストミンスター・ホールに移され、さらし首にされたクロムウェルの頭部は、四半世紀ほど立った頃、 突然落下。その後、ぱったりと行方が判らなくなりました。
    時折「クロムウェルの首」を所有している、という人物が出ては首が行方不明になり、かと思えばまた誰それが展示会を開き……
    そんなことが長らく続きましたが、現在クロムウェルの首は母校、シドニー・サセックス・コレッジの礼拝堂に安置されています。
    当初首がさらされていた場所に程近い、とある名門クラブではクロムウェルの幽霊が「首を捜すかのように」さ迷い、 シドニー・サセックス・コレッジの礼拝堂にはクロムウェルの幽霊が「体を捜すかのように」さ迷うといいます。
    なお、当時は「死体を暴かれると魂は天国にいけず、地上をさ迷う」と信じられていました。そのため、 死後に死体が掘り返され、裁判にかけられるというのは相当な恐怖だったようです。

    参考文献
    石原考哉他『ミステリーの都ロンドン ゴースト・ツアーへの誘い』(丸善、1999)
    石原考哉『幽霊(ゴースト)のいる英国史』(集英社、2003)

    紫の鏡 - Purple Mirror

    銀の鏡ですが、鏡面に紫色の塗料が塗りたくってあるそうです。 子供を呪い殺すとのことで、教会の封印がなされているため、現物をお見せする事はできません。また、 ご購入後に封印を解くのは自己責任でお願いいたします。
    ご購入特典として、呪いを回避できる……かもしれない「白い水晶」のペンダントも差し上げます。 繰り返しになりますが、封印を解くのは自己責任でどうぞ。

    comment

    紫の鏡。現代民話の一つですね。学校の怪談などにもよく出てくるのではないでしょうか。
    私が知ったとき(もう10年以上前……)は「二十歳になるまで「紫の鏡」という言葉を覚えていると死んでしまう」というだけの話でしたが、 今では「鏡に紫の絵の具を塗った女の子が死んだ」というエピソードや、呪いを免れる言葉「白い水晶」などが付け加えられているそうですね。
    個人的ではありますが、タブーに触れた場合の救済策が後から付け加えられる(※)、というのを目の当たりにした 現代民話(俗信?)として印象深かったため、大したものではないのにアイテムにしてみました。

    ※俗信には往々にして「禁忌・違反・結果・中和」という構図が見られます。
    「紫の鏡という言葉を、二十歳まで覚えていてはいけない(禁忌)」 「覚えていると(違反)」 「死んでしまう(結果)」 「ただし、白い水晶という言葉を覚えていればよい(中和)」
    かなり以前に大流行した不幸の手紙、幸福の手紙などもこの構成によって製作されています。
    もちろん、紫の鏡や不幸/幸福の手紙は全てデマですので、信じたりしないでくださいね。念のため。

    参考文献
    常光徹『学校の怪談 口承文芸の展開と諸相』(ミネルヴァ書房、1993)

    幸運の左手 - the Lucky Hand

    左手首から先だけのミイラですが、ただのミイラと言うなかれ、この手はあなたに幸運を招いてくれます。 持っているだけで金運・恋人運・仕事運が一気に何倍にもなるのです!
    ただし、0はどれだけ倍になっても0のままですのであしからず。
    なお、プレゼント等に使う際は、このミイラの詳細は伏せた方がよろしいかと思われます。なにせ、 この左手の主は大犯罪を犯した死刑囚。 そんなことを知ろうものなら、幸運と引き換えに真っ当な人生を台無しにしてしまうやもしれません。
    もっとも、ミイラを贈られて嬉しい方がいらっしゃるかは、また別の話ですが。

    comment

    えー。元ネタ忘れました。黒魔術か何かで死刑囚の左手(ただの手だったかもしれない) をミイラにして、幸運のお守り(盗賊のお守りだったかもしれない)にした、という 話をいつかどこかで聞いたような記憶がありました。ソースの文献が見当たらないので、 あまりコメントできません。
    詳細がわかり次第修正するかもしれませんが、暫定アップします。

    エミリーの赤い手袋 - Emily's red hands

    この手袋は特殊な能力もなく、一見ただの斑に染まったどす黒い色の子供用手袋です。ただ、この手袋にはこんな逸話があるのです。
    この手袋の最初の持ち主はエミリー。彼女はある冬の日、なくした白い手袋を探して魔法使いの家に行きました。 魔法使いはあっという間に手袋の場所を見抜きエミリーに教えてくれると同時に、 「私が手袋のありかを教えたと、人に言ってはいけないよ」と警告したのです。 しかし、エミリーはその約束を破り、お母さんに「魔法使いが教えてくれた」と言ってしまいました。
    その夜のことです。エミリーが二階の自室で寝ていると、地獄の底から響くような恐ろしげな声が聞こえました。 「エミリー、約束を破ったな。お前を地獄に連れて行く」。 ベッドの中で怯えるエミリーの耳に、なおも声が響きます。 「エミリー、お前は二階だな。そうら、一段登ったぞ」 「エミリー、そうら、二段登ったぞ」 時とともに魔法使いが一段ずつ、階段を登ってきます。 そうしてついに、魔法使いは階段を登りきってしまいました。 「エミリー、そうら、十三階段登ったぞ。お前を地獄に連れて行く!」 そうして、エミリーはどこかに行ってしまいました。

    エミリーのいなくなったベッドには、ポツンと赤い染みのついた手袋だけが残されていました。
    一年、二年たつうちに手袋の染みは広がり、今ではどす黒く赤く染まってしまいました。 もしかしたら、エミリーが地獄で流した血が手袋に滴っているのかもしれません。

    comment

    同名の話をそのまま持ってきてみました。 有名な都市伝説の「私、メリーさん。あなたの後ろにいるの」(リカちゃんの場合もあり)の 原型か?という触れ込みで知りましたが、日本で広く知られるようになったのには昭和50年代に放送していた(らしい)世界むかし話という番組で紹介されて(そして多くの子供たちにトラウマを与えて)以来だそうです。
    これについては本当にそのままなので、特にコメントするようなこともなく。参考URL(googleの検索画面ですが)を みていただければ、より詳しく紹介したページが見つかるかと思います。

    参考URL:googleでの検索結果

    救国の太鼓 - Drake's Drum

    小さな島国の偉大なる船乗り・ドリークが残した小さな太鼓です。 ドリークは世界中の海を荒らしまわる海賊であったと同時に、相当な愛国心の持ち主でもありました。 彼は他国の船を襲い財宝を奪い、いかなる手段で手に入れたのかは 表向きは秘密にしたまま、敬愛する女王に献上。 他国との間に戦争が勃発すると、自らの海賊船隊を率いて他国の船を次から次へと沈めました。 彼のまるで勇者のような活躍は、彼をあっという間にスーパースターにしたのです。 そして彼は死ぬ直前、こういい残しました。
    「国難ある時これを鳴らせ。私はすぐに救いに行く」
    救国の太鼓と呼ばれたこの太鼓が、いかなる理由でここに持ち込まれたのかは判りません。 ただ判っている事は、 現在、彼の敬愛した女王の血筋は絶え、内乱によって国はいくつもの小さな国家に分断されてしまったということだけ。
    まさに無用の長物となってしまった救国の太鼓はもはや、 戯れに叩いてみても、鈍い音が響くだけです。

    comment

    元ネタはフランシス・ドレイクの太鼓です。サー・フランシス・ドレイクといえば、数年前の海賊ブームで ぐっと知名度の上がった海賊……いえ、私掠船の船長であり、イギリス海軍の提督です。 (私掠船とは、国家に承認され、援助を受けることまで出来る海賊のことです。 ただし、一応は「襲っていいのは自国の船に攻撃をした国の船のみ」という条件がついています)
    さて、ドレイクが活躍したのは、イギリスの黄金期とも言われるエリザベス朝です。 私掠船船長時代にイギリスに莫大な財宝を持ち帰ったドレイクは、海軍の提督に任命されていました。 しかしイギリスの私掠船に業を煮やしたスペインは、アルマダ艦隊、通称無敵艦隊と呼ばれる大型船で構成された 海軍でイギリス侵攻を企てます。
    しかし、スペインはあくまで「イギリス侵攻」を目的としていた為、アルマダ艦隊にいた軍の6割強は陸軍でした。 それに対し、ドレイク率いるイギリス側は スペイン側の大砲射程外からの砲撃、大掛かりな火船による攻撃と、徹底した海戦で応酬します。
    海での戦いに長けた海賊に率いられたイギリス側はスペイン側を圧倒。その上、天がイギリス側に味方したのか、 (南下する風が吹かなかったため、北上しスコットランドを迂回して)スペインへと撤退するアルマダ艦隊を激しい嵐が襲いました。 この大嵐によってアルマダ艦隊は完全に壊滅状態に陥ったのです。
    当時のイングランドではこの神風とも言える嵐すら、ドレイクが「魔術」によって引き起こしたのだと信じられるほど、 ドレイクの活躍は目覚しいものでした。

    彼が市長を勤めたプリマス(イギリスの都市)には、ドレイクの住んだ「Buckland Abbey」が残されています。 ここは現在一般公開され、件の「ドレイクの太鼓」も公開されています。 プリマスの港には、ドレイクの像がスペインの方角を睨んで立っています。
    海に出ると鬼のような船長だったドレイクは、同時に紳士的な人物でもありました。 国を救い、仲間を愛し、市長として社会的貢献にも熱心だったドレイクは、今も イングランドでの英雄なのです。

    参考URL:(どちらも英語です)
    National TrustによるBuckland Abbey案内ページ
    Plymouth市による観光案内ページ
    his famous drumとしてのみ言及してるのはPlymouth市のページ、かけらも触れてないのがNational Trustです。でも写真がきれいなのでご紹介。行ってみたいなー……

    バイエルクロイツ・クヌートの名刺 - the Card calling BayerkreuzKnut

    古ぼけた一枚のカード。表と裏には文字らしきものが書かれていますが、 読む事が出来なければただのカードにしか見えないでしょう。 実はこの文字、古き時代の呪い文字です。表には「バイエルクロイツ・クヌート」、 裏側には「バイエルクロイツ・クヌートはすぐに来る」とだけ書いてあります。
    呪い文字はとても危険な代物です。文字を言葉にするということは、 文字に命を吹き込むという事。文字を口にしてしまえば、それは疾く現実になるのです。
    さてもうお判りですね? この名刺に書かれた呪い文字。 それを口にすれば、現われるのはバイエルクロイツ・クヌート。 彼がいかなる存在なのかは、いまだ誰も知りません。

    comment

    英語が甚だ不安です。
    さて、ネタとしては「クロイツバウエル・クヌート」というドイツの民話です。 うっかり間違って、名前をひっくり返してしまいました。あちゃー。
    この話自体は、以下のような話です。
    クロイツバウエル・クヌートの名刺を拾った仕立て屋が、名刺を使って クロイツバウエル・クヌートを呼び出す。クロイツ(略)を使役して王女を娶り、 もう用済みだ! と名刺を捨てる。
    その後、出自の卑しい男に娘を嫁にやるのが悔しかった王様が、策略にはめて 仕立て屋を城から追い出してしまう。復讐を誓った男は一度捨てた名刺を苦労して探し出し、 再びクロイツ(略)の助けを得、あの手この手で王様を策略にはめ返す。 最後は再び王女と結婚し、めでたしめでたし。
    教訓:有益なものは捨てるな。
    ただそれだけの話です。

    さて、ここからは迫の作った適当設定。
    バイエル(略)は、「心」を覗く悪魔。ただし、本来は心の中をつつく事くらいしか出来ないし、 下手につつきすぎて楽しい観察対象である「心」を壊すのも嫌がるので、ほうっておけば無害です。
    使役するメリットは、他人の心を覗けることです。バイエル(略)は正直者で、絶対に嘘はつけません。 それは「心」が時として嘘をつくのとは対照的です。もしバイエルを使役することが出来るのならば、 日本の妖怪:サトリのような能力を手に入れたも同然でしょう。心が覗ければ、人を操ることだって そう難しくはありません。
    基本的にバイエル(略)は名刺によって呼び出されないかぎり、誰彼構わず心を覗きまわっています。 覗かれた側は気付く事もありません。人の心を覗きまわってにやにや笑いをする悪魔、それがバイエル(略)です。
    反対に、バイエル(略)を呼び出すデメリット。彼がうっかり心をつついている時に呼び出そうものなら、つつかれていた心がどうなるかわからない、という事です。 こじ開けられた心は容易く崩壊しかねないのです。
    バイエル(略)を完璧に、そして躊躇なく使役しえるのは、まさに心を持たない人だけでしょう。

    元ネタ文献:
    深津喜平『ドイツ国民童話集』(東京開成館、1943)

    孤独の壺 - the Lonely jar

    東洋風の小ぶりな、古い壺です。内部には何らかの粘液がついた跡が残っていますが、 指で触れてみてもかさかさとした感触が残っているのみです。
    この壺は「正しい使用法」さえわかれば、 所有者に莫大な富を授けてくれる、魔法の壺なのだそうです。 その代わり、所有者の周りの人は原因不明の死を遂げていくそうですが……。 そして、最後には所有者も同じく原因不明の死に至るとのこと。
    富か命か。「正しい使用法」を突き止めたとき、あなたならどちらを選びますか?

    comment

    元ネタは蟲毒、中国の呪法ですね。蟲毒と孤独を引っ掛けたネーミングです(またしょうもない)。 ちなみにこの壺は「使用済み」で、単なる壺です。呪えません。
    有名なので説明不要かと思いますが、簡単に蟲毒についてご紹介。

    <作り方>
    まず壺を用意します。 その中に複数の虫を入れます。 蓋を固く閉めます。 放置します。 中の虫が食糧難から共食いして、一匹だけ残ったら完成です。
    <効果>
    所有者に富をもたらしてくれる。 ただし、もたらしてくれた富と同価値の生贄を定期的に与えないと、 所有者は虫に食われる。
    ちなみに捨てても戻ってくる。廃棄の際には、もたらしてくれた富以上の財産を添付しなければならない。
    <応用編>
    蟲毒を作り、金品を添えて人に渡す。 蟲毒だと知らない相手は生贄を与えるのを怠るため、虫に食われてしまう。 このように人を呪い殺すのにも使うことが出来る。

    人を生贄にする→人がいなくなる→ロンリーになる。こんな三段論法です。
    金品を添付して人に贈る、というのは何かの本で読んだのですが、 その本がどれなのかわかりません……。グーグルで検索しても ほとんど出てきませんでした。
    念のため、参考URLとしてグーグル検索のみをリンクしておきますね。

    参考URL:「蟲毒」のグーグル検索結果

    美食家の石 - Soup of stone

    一見何の変哲もない石ですが――驚くなかれ、この石を水に入れて煮込めば、 あっという間になんとも美味しいスープに変わるのです!  その効果はかの聖人カドコイスをも救ったというほどです。
    ただし、うまく使わないとただの白湯が出来てしまいますので、 使いどころをお間違えなきよう!

    comment

    元ネタは「石のスープ」。
    飢えた旅人が村人から鍋と水を借り、美味しい「石のスープ」を作るのだと宣言。 興味津々な村人をよそに、石を鍋に入れて煮込み始めます。
    「石のスープは出来たかい?」と尋ねる村人に、 旅人は「うん、おいしい。でもここに塩が入れば、もっと絶品なのになあ。 少しだけ塩を分けてくれないか?」と答えます。 村人に塩を分けてもらい、石のスープに「追加で」入れ、 またくつくつと煮込みます。
    「どうだい、美味しいスープが出来たかい?」と興味津々で尋ねる村人に、 さらに「美味しい、けれどここに……」と、あれこれ具材を挙げる旅人。
    最終的に野菜やハム、ソーセージの入ったスープを村人と分け合い、 旅人は飢えを癒しました。村人は騙されたとも知らず、旅人と食したのは「石のスープ」であり、 自分たちの分けた材料で出来たスープだなんて思いもしませんでした、というお話。

    ということで、この「美食家の石」も、上記の手順を踏まえなければ 美味しいスープは出来ないのです。
    こんなものを売るあたり、詐欺以外のなにものでもありません(笑)